9月1日から30日までの1月間、特別公開されている京町家があるというので、洋食おがたで食べ過ぎたお腹を摩りながら向かってみました。
洋食おがたを出てすぐのところに古い教会があるのに気がつきました。札幌の時計台を連想させる建物は、抜けるような青い空に白い壁が綺麗に映ります。
洋食おがたは、柳馬場(やなぎのばんば)という通りにあり、この通りは私の好きなお店が何軒かあるのでその暖簾をチェックしながら歩いていきました。
ほどなく到着した公開中の京町家です。京都御所の南ブロックにあり、最近は『御所南』と呼ばれたいへん人気がでてきた地区でした。
京町家は、改造されてレストランなどの店舗や宿泊施設などに使われているところが増えてきましたが、この特別公開の藤野家は一般の方が居住している住宅なのだそうです。
居住中の京町家の公開は初めてだそうで、タイミングよく見学できたことに感謝です。
入場料を払って建物に入ると、ボランティアの説明員が居て、京町家の概要からこの家の特徴など詳しく説明してくれました。
京町家は昭和25年以前に建てられた木造住宅で、現行の建築基準法の影響を受けていない建物になります。
この藤野家は、門を入ると前庭があり、すぐに茶室兼客間がありました。中程には居間と台所、そして中庭を挟んで浴室や洗面所が配置され、蔵もありました。
奥の庭の下は4mも掘り込んで、大雨の時にはそこに水が流れるようになっているのだそうです。
京の建物は夏を基準としているそうですが、いかに涼しく暮らせるかを考えて工夫を凝らしているのだそうです。その一つが前庭から奥の庭に風が流れるように考えて建てていると説明を受けました。
私には建築素材も興味深く見学しました。古くとも手入れの行き届いた素材はとても魅力的に思えます。
また、京都の住所表示のルールや、町内の区切りについてもレクチャーがありました。
充分に見学を楽しんだあと、もう少し散策してみようと寺町の方角に歩いてみました。
寺町は御所と鴨川の間を南北に続く通りですが、市役所の前の御池通を挟んで随分と雰囲気が変わります。
御池通の南側はアーケードのある商店街になり新京極に繋がります。北側はアーケードがなく、通りの両側に商店が並びます。
御池通の北側は昔よく訪れた街で、寺町に向かう足も早まりました。
有名なお茶のお店、一保堂、手梳き和紙の問屋さん、ロシアンケーキで有名な洋菓子屋さん・・・
まずは一保堂に入ってびっくりです。以前は大きな暖簾を潜ると、薄暗い店内に茶箱や壺が並んでいて年代を感じさせてくれる店構えでした。
ところが今回久しぶりに店内を覗いてみると、海外からの旅行客が多く、店員さんも国際色豊かになっていました。もちろん店員さんはかなり上手な発音の日本語で対応してくれました。
右側奥にはカフェスペースができ、左側は利き酒ならぬ利き茶ができるカウンターがありました。煎茶の種類に悩んでいると、試飲で飲み比べてみてくださいと利き茶のブースに案内してくれました。
そこにはダンディな店員さんが居て、お高い日本茶の上手な飲み方を伝授してくれながら利き茶ができます。ひとときの間、煎茶を楽しんで一保堂を後にしました。
後で気が付いたのですが、利き茶カウンターが楽しくて写真を撮るのを忘れてしまいました。残念です。
さて、そぞろ歩いて老舗の洋菓子屋さんに到着しました。
そうです、『村上開新堂』です。
創業明治40年。1907年に開業したこのお店、道路に面した部分が洋館で、奥には京町家が続く珍しい建物です。
このお店の入り口がとてもユニークで、写真を撮ったのですが見当たりません。上の写真の下部に扉がすこーし写っていますが、2枚の扉の右は引き戸になっており右にスライドさせて開けます。左のドアは押して開けるタイプになっています。
一対の扉で右と左の仕様が違うものを初めて見ました。
店内に入ると、ケーキ売り場があります。年季の入ったガラスのショーケースに並べられたクッキーやケーキを、途切れることなく訪れるお客さんが買って行きます。
その売り場の右奥に、京町家の入り口が続きます。
扉を開けると、細長い京町家を今風に改装したカフェスペースがありました。
靴からスリッパに履き替えて店内に入ります。
昔はここが店主の応接間になっていた場所なのだそうです。写真はとりませんでしたが、綺麗に整った奥庭があり、そのお庭に向かって椅子を並べた席もありました。
暑い日だったので、珍しくアイスティを注文しました。
白桃フレイバーのアイスティとロシアケーキです。
ロシアケーキとは2枚のクッキーの間にジャムを挟んだものでした。素朴な風味の粉の懐かしい味でした。
そして、その日最後の一個と言われたオレンジゼリーをありがたくいただきました。
最初の一口はゼリーだけを食べてみました。普通のゼリーです。その後で、オレンジの蓋の部分の果汁を絞ってゼリーと一緒に食べると、とっても美味しくて驚きました。長く人気があるというのが納得できます。
このゼリーは季節によって変わるようです。
さっぱりとしたオレンジゼリーの余韻を残して、村上開新堂を出て市役所まで歩きました。
京都、充実したランチと御所南の散策で満足した1日でした。